COLUMN

英会話では「英語脳」はできない!「英語脳」の本当の作り方

2022.12.20

英語学習・教育に携わったことがある人であれば、一度はどこかで「英語脳」という言葉を耳にしたことがあると思う。今回はその「英語脳」のお話だ。

「英語脳」という言葉が巷で使われる場合、2つの意味で使われる。1つ目は、英語を聞き、話す際の音声面での能力。2つ目は、英文を構築する際の文法面での能力だ。「英語脳」という言葉の発端は、言語音声を扱った脳科学研究からだ。よって今回は、元祖となる音声面での「英語脳」について、話をしたい。

その脳科学研究では、日英両言語を操るバイリンガルと、日本語だけを話すモノリンガルの人を集め、日本語と英語のニュースを聞かせ、脳の活動を調べた。すると、バイリンガルの脳は日本語ニュースと英語ニュースを聞いた時で別々の場所が活性化するのに対し、モノリンガルは日本語を聞いた時も英語を聞いた時も同じ場所が活性化した。バイリンガルはそれぞれの言語ごとに別々の神経回路網で音声を処理しているのだ。こうしたことから、英語には英語音声用の神経回路網がある、ということで「英語脳」という言葉が出てきた。

この研究で活性化した脳領域は、左脳に位置する「ウェルニッケ野」という領域だ。ここは言語音のデータベースともいうべき場所で、言語を聞いて理解する時だけでなく、発話する際にも我々はここから単語の発音知識を取り出して使う。だから我々日本人の英語学習者が英語をきちんと聞き、話せるようになるためには、このウェルニッケ野に英語用の神経回路網を構築する必要があるのだ。では、どのように?

ウェルニッケ野は、聴覚とダイレクトに繋がっている。だから、ウェルニッケ野に英語音声の神経回路網を構築したいと思ったら、英語リスニングをしなければならない。聞き流しではダメだ。聞き流しで神経回路ができるのは、音声知覚に敏感な乳幼児だけだ。我々大人が「英語脳」を構築したければ、「精緻に」「しつこく」聞く必要がある(これを「精聴」と呼ぶ)。TOEICのリスニング問題の答え合わせのときに1~2回聞いただけでポンポンと次に進んでしまっている人は、この点を心に留めていただきたい。

「精緻に」聞けば、日本語にはない英語独特の音声を、ウェルニッケ野のデータベースに蓄積することができる。その最たるものが、英語の「音変化」だ。英語は日本語と違い、単語と単語の間で、発音の化学変化のような現象が起きる。たとえば、Can I ~?であれば、「キャン・アイ」→「キャナイ」、Let it beであれば、「レット・イット・ビー」→「レリビー」、check it outであれば、「チェック・イット・アウト」→「チェケラウ」、というように。こうした英語独特の音変化のインプットは、「精緻に」「しつこく」聞くことなしには成し得ない。

また、精緻に聞いていると、テキストには載っているのに、殆ど発音されていない単語がたくさんあることにも気づく。これは、初めは納得いかないものだ。聞き取れないのは自分の耳がおかしいのか?と疑心暗鬼になる人もいるだろう(25年前に英語初級者だった頃の筆者がまさにそうだった。「聞き取れないのは自分の耳はおかしいからでは?」と何度疑ったか分からない。また、単語単語を区切って発音してくれないネイティブの発音を恨めしく思ったことさえある)。しかし、こうしたことは、「精緻に」「しつこく」聞くことで、少しずつ解消される。筆者も当時、こうした音を、再生速度を限界まで遅くして聞くことで、「ああ、これは本当に殆ど発音してないんだな」「これはそういうものなんだ」と納得するようになった。さらに、「そういうもの」の発音を刷り込むために、ダメ押しで自分もその発音を真似て何度も発音した。「耳コピ」をした上での「音読」や「シャドーイング」だ。ウェルニッケ野に「英語脳」を構築するために必須なのはリスニング(精聴)だが、「耳コピ」をした上での「音読」や「シャドーイング」も併せて行えば、その効果をより確実にしてくれる。

英会話をたくさんやれば「英語脳」が構築される、と勘違いしている人が大勢いるが、英会話は「英語脳」構築には向かない。ネイティブの言ったフレーズをちょっと聞いて2~3回オウム返しする、ということでは、「精緻さ」も「反復」も、全くもって不十分だからだ。英会話を否定しているわけではない。しゃべれるようになるためには、相手を伴った会話練習は大事だ。英会話には英会話の効果がある。ただし、リスニングとスピーキングの土台となる「英語脳」の構築には、独立して集中的に行うリスニング練習(精聴)が絶対に必要だ。これは何度言っても言い過ぎることはない。

リスニング(精聴)なしに英語を上達しようとするのは、聞くことなしに(あるいはちょっと聞いただけで)歌詞カードで練習して歌を上達しようとするようなものだ。何度も聞かずして上手くなることがありえないのは、歌も英語も同じである!

精聴(と音読)には、その効果を倍増させるコツがある。これについては、当社のセミナー研修で実演しつつ教授している。正しいやり方を知れば、大人になってからでも、「英語脳」の構築は十分可能。ぜひ一緒に頑張りましょう!


株式会社グローバル推進室では「一人でも多くの人が自律的な学習習慣を身につけ、英語で広がる仕事・人生を楽しめるようになる社会」の実現に向けて、『英語自己学習セミナー研修』をはじめとした各種セミナー・研修を行っています。英語教育・学習についてお悩みをお持ちの企業・団体・学校・個人の方は、ぜひお問い合わせください。

電話する
お問い合わせ